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土と木と便り


2022年10月号


朝起きると気温が一桁台の日も珍しくなくなってきました。夜は湯たんぽの日々の始まりです。今年は比較的天候に恵まれたため、菜園からはとうもろこし、南瓜、ジャガイモがたくさん採れ、秋の恵みを楽しめています。

さて、珈琲豆を日々焙煎しながら思っていることを少しお話させてください。

珈琲豆を美味しく焼くための特別な焙煎機など存在しませんし、珈琲を美味しく淹れるための特別な器具や淹れ方も存在しません。珈琲は元々美味しいものなので、美味しさを損ねないように豆を焼いて淹れればよいのです。あたかも特別な道具や方法が存在するかのような話しがありますが、それは珈琲に付加価値を付けて売りたい側が大げさに演出した根拠なき言説にすぎないものです。

中世後期のヨーロッパにコーヒーが伝播した頃は生豆が街で売られていて、各家庭がそれを買い、家の台所で焙煎して淹れて飲むのが普通のことでした。コーヒー豆は肉や魚と同じように生活の中にあるもので、コーヒーは「煎りたて挽きたて淹れたて」のものを味わうから美味しいということをその時代の人たちは当然の感覚として身に着けていたのだと思います。

近代化に伴い、人々の暮らしは劇的に変化しました。労働の忙しさに追われるため、生活の中で手間ひまのかかることはなるべく省略されるようになりました。いわゆる時短の始まりです。コーヒーの生豆を焼くという作業もやはり時短の対象となり、予め焙煎してある豆を買うことが主流になりました。

豆を焙煎して売る側も当然、近代化の流れの中で商売を行うのでより多くの焙煎豆やコーヒーを低コストで効率よく作るようになります。そうすると、煎りたて挽きたての美味しいコーヒーからは次第に掛け離れたものになり、焙煎後の目減り量が少なくて済む生焼けの極浅煎りや粗悪品のブレンドなど、低品質なコーヒーが平然と出回り、しかもそれを覆い隠すように根拠不明な珈琲ウンチクが流布され、人々は本当の美味しいコーヒーにたどり着きにくくなってしまいました。

最初にも述べたように、珈琲は元々美味しいのです。「煎りたて挽きたて淹れたて」という美味しさの基本条件に近ければ近いほど美味しくなる、たったそれだけのことです。土と木とではその昔の人々の生活の中のものであったはずの珈琲をお出しできるように、日々少量ずつ生豆を焙煎し、なるべく煎りたてのものを皆様にお届けできるよう心掛けております。

生活の珈琲こそ、最も質の高いコーヒーであってほしい…そういう思いを込めて焙煎をしています。