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土と木と便り


2023年9月号


珈琲豆の焙煎を始めたのは、生豆さえ手に入れれば自宅の台所でも豆を焼けると知ったからです。ガスコンロと手鍋と自分で豆を焼いてみたいという気持ちさえあれば、それまで飲んでいた市販品よりもはるかに美味しい珈琲が飲めるという話を耳にして、半信半疑のまま実際に生豆を買って焙煎に挑戦してみたことから始まりました。

そもそも飲用の始まりとされる中世ヨーロッパの市井の人々は街で生豆を買い、その日飲む分だけの生豆を台所で焙煎して、いつも煎りたての珈琲を嗜んでいたと言われています。つまり、珈琲はその道のプロによって生み出されてきたのではなく、誰にでも親しみやすい家庭の味が原点で、そこから様々な進化を遂げてきたと言えますが、実はその原点こそが珈琲の味や香り、そして品質における最高の形であるということを、実際に焙煎を始めたことによって身を持って知りました。

時代は近代化、産業革命の流れで人々の暮らしが次第に変化していきました。大量生産消費社会を実現したことによって、お金を出せば何でも手に入れられるようになりましたが、その一方で人々はお金を手に入れるために日々の労働が忙しくなり、とにかく時間に追われるようになりました。そうなってしまうと、生豆をわざわざ買ってきて台所で焙煎する暇がなくなります。予め焙煎された豆を買うようになり、それが次第にインスタントコーヒーやドリップバッグを生み出し、大量焙煎とコストダウンを実現するために、低品質な珈琲がたくさん出回り、しかもそれを誤魔化すためのウソ(珈琲ウンチク)さえもが平然と流布されるようにもなりました。

珈琲は極浅煎りが基本で酸味・フルーティーさを楽しむものだ、焙煎から3か月寝かせた熟成豆はまろやかで美味しくなる、などといった品質的に考えてありえない話が業界側から何十年にもわたって今も変わらず発信されていますが、浅煎りや深煎りの焙煎度合いは飲む側の好みによって選択されるべきものであり、焙煎後の珈琲豆を長期間寝かせてしまうと、どんな保存状態であっても酸化してしまいますので、なるべく早めに使い切るべきものなのです。

土と木とは煎りたての美味しさを伝えたいので、いつもご注文を受けるごとに手回し焙煎機で少量ずつ焼いています。珈琲豆も他の食品と同じように、作り立てが一番美味しいものです。大量生産には不可能な煎りたての味と香りを皆様にお届けしたいという思いを込めて、いつも生豆を焼いています。