土と木と便り
2025年5月号
先日、私たちがよく行くキムアネップ岬で白鳥や鶴、様々な野鳥がそれぞれ気持ちよく過ごしていました。種類の違うたくさんの野鳥たちがお互い干渉することなく泳いでいる姿はとても清々しいものでした。
今月は珈琲の淹れ方のお話しです。珈琲の淹れ方について聞かれることが時々ありますが、あまり複雑な説明をしてもなかなか伝わりにくいので基本的には「お好きなように淹れてください」とお答えしつつ、できればお湯の温度は90℃以下(82℃〜87℃が最適)で、あまり時間を掛けず3分以内には淹れてほしいです、ということだけは付け加えてお伝えしています。
90℃以上の高温のお湯で珈琲を淹れてしまうと香りも味も飛んでしまいます。ですから、ヤカンで沸騰させたお湯をドリップ用のポットに移し替えたら、そこにおちょこ一杯程度の水を足し、少し温度を下げてからドリップしてみてください。そうするとドリップに最適な82℃〜87℃くらいのお湯が出来あがり、コク、苦味、甘みを引き出すことが出来るので珈琲を美味しく淹れられます。
余談ですが、どこかの有名カフェのバリスタの淹れ方を真似て「点滴ドリップ」などと言って、お湯を一滴ずつ落としてじっくり時間を掛けて淹れる方法もありますが、その淹れ方はあくまでもカフェの演出のためのものなので、生活で飲む珈琲の淹れ方としてはあまりお奨めできるものではありません。そもそもドリップに時間を掛け過ぎてしまうとだんだんお湯がぬるくなってドリップの適温から外れてしまい、次第にエグ味が出てくることもありますので、なるべくサッと淹れてクリーンな液体を取り出すことを意識された方が良いです。逆に、あまり早く淹れてしまうと珈琲の味が出にくいのでは?と思われるかもしれませんが、お湯の温度がドリップの適温であれば短時間で淹れても良質な珈琲を取り出すことが可能です。
冒頭で「あまり複雑な説明をしても…」と書いておきながら、結局は複雑な説明になってしまいましたが、要するにあまり特別なことはせずに、至って普通の方法で淹れていただければそれで良いのです。
そして何より、美味しい珈琲を淹れるためには煎りたての珈琲豆をご用意ください。美味しい珈琲はやはり何と言っても煎りたて、挽きたて、淹れたてなのです。この三大条件に当てはまるかどうかはその珈琲の品質を表すものだと言っても過言ではありません。
どんな物事も科学的に解明されている時代で、ここで書いた珈琲の抽出温度や時間についての基本的な情報は本来であればすでに広く共有されているべきなのですが、なぜか日本の珈琲文化の中ではいまだに昭和の喫茶店ブームの頃から語られている根拠不明なウンチクが平然とまかり通っています。工業製品化された珈琲を薄利多売する業界側の都合によって作られてきたいい加減な話が、今も一般的に信じられていることはとても残念なことです。
近頃では極端に浅く煎られ酸味の強いものを「フルーティ」とか、高価格化を目論んだものを「スペシャルティ」などとそれっぽい横文字が並んでいますが、珈琲は本来生活の中で育まれてきたものであり、もっと身近で単純で誰にでも美味しく淹れられるものなのです。
当店は手回し焙煎機で日々少量ずつの珈琲豆を焙煎し、店頭でもオンラインストアでもいつも皆様に煎りたての珈琲豆をお届けいたします。煎りたてで香り豊かな珈琲をどうぞお楽しみください。